犬の皮膚腫瘤とは、皮膚にできるしこりやできもので、体のさまざまな部位に発生する可能性があります。良性のものから悪性の腫瘍までさまざまなタイプがあり、特に悪性腫瘍は早期の診断と治療が重要です。根本的な治療には「皮膚腫瘤摘出」という外科手術が用いられます。

今回は、皮膚腫瘤の種類や診断方法、手術の流れ、術後ケアまで、愛犬の健康を守るために知っておくべき情報を詳しくお伝えします。

犬の皮膚腫瘤とは?種類と特徴


皮膚腫瘤は、良性と悪性に分類され、良性の腫瘍はゆっくりと成長し、周囲の組織に浸潤しないため再発も少ないのが特徴です。一方、悪性腫瘍は急速に成長し、周囲の組織に浸潤し転移することもあるため、早期治療が必要です。

代表的な皮膚腫瘤の種類

脂肪腫
良性の腫瘍で、柔らかくゆっくりと成長します。中高齢の犬に多く、特にラブラドール・レトリバーやダックスフンドなどに発生しやすいです。

乳頭腫
ウイルスによって引き起こされる良性の腫瘍で、皮膚や口腔内に小さなカリフラワー状の突起ができます

肥満細胞腫
悪性の腫瘍で、形状や大きさがさまざまです。全身にできる可能性があり、ボクサーやブルドッグ、パグなどに多く発生します。
肥満細胞腫について詳しくはこちらをご覧ください

皮膚腫瘤は特に頭部や首周り、四肢、胸腹部などに発生しやすく、犬の年齢や犬種によっても発生傾向が異なります。特にシニア犬では発生率が高く、定期的なチェックが推奨されます。

皮膚腫瘤の診断方法


皮膚腫瘤の診断には、さまざまな検査が行われます。まず獣医師による視診と触診で腫瘤の大きさや形、硬さなどを確認します。
続いて行われるのが、細胞診や病理組織検査といった具体的な診断です。細胞診では、細い針を刺して、細胞を顕微鏡で確認します。確定診断(腫瘤の種類や、悪性か良性かなどを確定させる)ができることもあります。

病理組織検査では、細胞診で確定診断ができなかった場合や外科施術をする予定がある場合に、組織の一部または全部を採取して、外部の検査機関にて検査を行います。確定診断に至る可能性が最も高い方法です。

また、X線検査や超音波検査、CT検査といった画像診断も行われることがあります。

これらの検査を通じて腫瘤の内部構造や、他の組織への転移がないかを確認し、最適な治療方針を決定します。

皮膚腫瘤摘出手術の流れ


皮膚腫瘤が摘出対象と判断された場合、手術に向けて準備が行われます。

・手術前の準備
麻酔が安全に行えるかを確認するため、心電図や血液検査で健康状態をチェックします。また、手術前には飲食の制限が指示されることが一般的です。

・切除
良性腫瘍の場合、腫瘤の周囲に少し余裕を持って切除します。悪性腫瘍の場合は再発防止のため、広範囲に切除し、周囲の健康な組織も一部含めて摘出します。

・縫合
切除後は電気メスやレーザーで止血し、傷口を縫合します。場合により、ドレーン(排液チューブ)を挿入して体液の排出を促すことがあります。

・術後
摘出部位が大きい場合や出血が予想される場合は、数日間入院して経過観察を行います。

ご自宅での術後のケアと回復期間


術後は、傷口を清潔に保つために消毒薬や抗生物質を使用し、犬が傷を舐めたり引っ掻いたりしないようにエリザベスカラーを装着します。また、激しい運動は控え、安静を心がけましょう

食事は消化しやすいものを選び、水分補給にも注意が必要です。通常1~2週間で傷が回復し、動物病院で抜糸を行います。異常があればすぐに獣医師に相談してください。

皮膚腫瘤摘出後の予後


摘出手術後の予後は、良性か悪性かによって異なります。良性腫瘤であれば再発リスクは低いですが、悪性の場合は再発や転移の可能性があるため、定期的な検診が重要です。食事や生活習慣の見直し、健康維持のための運動も予後の安定に役立ちます。

まとめ:愛犬の健康を守るために


犬の皮膚腫瘤は、良性から悪性のものまでさまざまなタイプがあり、早期発見と診断が重要です。特に悪性腫瘍は急速に進行するリスクがあり、治療の遅れが再発や転移を引き起こす可能性もあります。愛犬の健康を守るため、日常的にしこりや皮膚の状態をチェックし、異常があれば早めに動物病院で診察を受けましょう。

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