愛犬や愛猫の歯や口腔内を日常的にチェックすることは、健康管理において欠かせない重要な習慣です。しかし、稀に「歯肉腫瘤」と呼ばれる異常が現れることがあります。歯肉腫瘤とは、歯茎にできる腫瘤のことで、一見無害に見えることもありますが、放置すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

今回は、歯肉腫瘤が引き起こすリスクや早期発見の重要性、具体的な治療法について詳しくお伝えします。

歯肉腫瘤はなぜ危険なの?


歯肉腫瘤とは、歯肉に発生するしこりや腫れのことを指します。一部の腫瘤は良性で無害ですが、悪性腫瘍のリスクもあるため注意が必要です。以下に、歯肉腫瘤を放置した場合に起こり得るリスクを挙げます。

・腫瘤の増大による生活への影響
歯肉腫瘤が良性であっても、放置すると徐々に大きくなり、食事や噛む動作が困難になることがあります。また、腫瘤が出血しやすくなることで、痛みや不快感が増し、ペットの生活の質(QOL)が低下する可能性があります。

・悪性腫瘍の可能性
歯肉腫瘤の中には、メラノーマ(悪性黒色腫)、扁平上皮癌、線維肉腫などの悪性腫瘍が含まれる場合があります。悪性腫瘍は周囲の組織や骨に浸潤し、リンパ節や他の臓器に転移するリスクもあるため、迅速な対応が必要です。
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・感染症や口腔内の健康悪化
腫瘤が破れて出血すると、そこから細菌が侵入して感染症を引き起こすことがあります。感染が進行すると歯周病が悪化し、口腔内全体の健康状態が損なわれる可能性が高まります。

歯肉腫瘤は、一見ただの「できもの」に見えることもありますが、その内に潜むリスクを知り、早期に適切な対処をすることが何より大切です。

犬や猫の歯肉腫瘤の主な原因


歯肉腫瘤には、良性腫瘍と悪性腫瘍が含まれ、具体的な種類として以下が挙げられます。

・良性腫瘍:棘細胞性エナメル上皮腫(エプリスなど)
・悪性腫瘍:メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫 など

これらの腫瘍の正確な原因は不明ですが、慢性的な歯肉の炎症や歯周病が関連していることが示唆されています。歯周病を放置することで、歯肉の損傷や炎症が進み、腫瘤の形成リスクが高まる可能性があります。

歯肉腫瘤に気づくためのチェックポイント


日常的に愛犬や愛猫の歯や歯茎をチェックする習慣をつけることが重要です。以下のポイントを意識して観察しましょう。

・歯肉の腫れや色の変化
歯肉が腫れていたり、赤く変色している部分がないか確認してください。腫瘤がある場合、盛り上がりや色の違いが見られることがあります。

・口臭の変化
突然口臭が強くなった場合、腫瘤や歯周病が関係している可能性があります。

・食事中の行動
食べにくそうにしている、片側だけで噛む、食べるのを途中でやめるといった行動は、口腔内の異常のサインです。

・視覚的なチェックと記録
定期的に口腔内の写真を撮影しておくと、変化を比較しやすくなります。特に腫瘤が小さい段階では、写真が早期発見の助けになります。

動物病院での診断方法


動物病院では、まず視診と触診によって歯肉腫瘤の大きさや位置、色の変化、表面の状態を確認します。見た目の特徴から、腫瘤が良性か悪性かをある程度予測することも可能ですが、正確な診断にはさらなる検査が必要です。

次に、レントゲン検査を行うことがあります。この検査では、腫瘤が骨に浸潤しているか、あるいは周囲の歯や骨に異常がないかを調べます。特に悪性腫瘍が疑われる場合には、リンパ節や他の臓器への転移の有無を確認するために重要なステップです。

さらに、細胞診や病理検査が行われます。これは、腫瘤から細胞を採取し、顕微鏡でその性質を詳しく調べる検査です。細胞診や病理検査によって、腫瘤が良性か悪性かを明確に判断できるため、その後の治療方針を決定するために欠かせない検査です。

治療方法


治療は腫瘤の種類や進行状況によって異なります。良性腫瘍や転移していない悪性腫瘍の場合、手術で腫瘤を切除することが一般的です。切除手術は麻酔下で行われ、腫瘤だけでなく、その周囲の健康な組織も一部切除することで、再発のリスクを最小限に抑えます。

一方、悪性腫瘍の場合は、放射線治療や化学療法が手術と組み合わせて行われることもあります。これにより、腫瘍の進行を抑え、治療効果を高めることが期待されます。

また、軽度の症状や手術後の感染予防のためには、抗生物質や抗炎症薬が処方されることもあります。これにより、炎症や感染を抑えながら腫瘤の経過を観察します。

治療費は選択される治療法や動物病院の設備、地域によって異なりますが、一般的な目安として、手術のみで数万円から十数万円程度がかかることが多いです。事前に見積もりを確認し、治療計画について獣医師としっかり相談することをおすすめします。

予防のために飼い主様ができること


歯肉腫瘤を予防するためには、日々の口腔ケアと健康管理が欠かせません。

まず、最も基本的なのは、歯磨きを習慣化することです。ペット用の歯ブラシや歯磨きシートを使用し、歯や歯肉を優しく清掃することで、歯周病の予防や歯肉の健康維持に役立ちます。また、デンタルケアグッズの活用も効果的です。例えば、歯磨きガムや口腔内スプレー、デンタルジェルなどは、歯磨きが難しい場合でも、歯石の蓄積や口腔内の細菌の増殖を抑えるサポートとなります。

さらに、定期的に動物病院で歯科検診を受けることも予防において重要です。定期健診では、飼い主様では見つけにくい口腔内の異常を早期に発見できるため、腫瘤が小さいうちに対処することが可能になります。特に、高齢のペットでは、腫瘤の発生リスクが高まるため、1年に1回以上の検診を習慣にすると安心です。

最後に、愛犬や愛猫の口腔内を日常的に観察することも大切です。食事中の異常や口臭、歯肉の腫れや色の変化に気づいたら、早めに獣医師に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ


愛犬や愛猫の歯肉腫瘤は、放置すると深刻な問題に発展する可能性がありますが、日常的なチェックや早期の対応で予防と治療が可能です。飼い主様による日頃の観察と動物病院での定期健診を習慣にすることで、愛犬や愛猫の口腔内を清潔に保ち、健康を守りましょう。何か気になる症状があれば、早めに動物病院で診察を受けましょう。

◼歯科については以下のページでも解説しています
犬の歯周病について
犬と猫の口腔内腫瘍について

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