腎臓は血液をろ過し、体内の老廃物や毒素を尿として排泄する他、電解質バランスの維持や血圧の調節、赤血球の産生を促進するエリスロポエチンの分泌など、様々な重要な機能を持っています。慢性腎臓病は、腎臓の機能が低下した状態、あるいは腎臓の障害を示す所見が長期(3カ月以上)にわたって続く状態のことです。特に猫では加齢とともに発症率が高くなります

今回は、犬と猫の慢性腎臓病の原因や症状、治療法などを詳しくお伝えします。

原因


腎臓病には「急性腎臓病」と「慢性腎臓病」の2種類があります。
急性腎臓病は、熱中症や細菌性腎盂腎炎、毒物の摂取、糸球体腎炎などの原因で数時間〜数日で急激に腎機能が低下します。

一方で、慢性腎臓病は加齢、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)遺伝子の異常、細菌・ウイルス感染、脱水、高血圧などが関与して発症すると考えられていますが、正確な原因は特定されていません。

症状


慢性腎臓病はIRIS (国際獣医腎臓病研究グループ)のガイドラインに基づき、4つのステージに分けられます。

・ステージ1 (高窒素血症なし、クレアチニン正常範囲内、残存腎機能は約33%)
初期段階で目立った症状は見られません

・ステージ2 (軽度の高窒素血症、クレアチニン正常範囲内〜やや高値、残存腎機能は約25%)
多飲多尿、体重減少、食欲不振、元気消失、脱水、嘔吐などの軽い症状が見られることがあります。

・ステージ3 (中等度の高窒素血症、クレアチニン2.9~5.0mg/dL、残存腎機能は約10%)
食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、貧血、持続的な蛋白尿、高血圧などが見られます。

・ステージ4 (重度の高窒素血症、クレアチニン>5.0mg/dL、残存腎機能は約5%以下)
ステージ3の症状に加えて、意識レベルの低下、無尿、痙攣などが見られます。積極的に治療介入を行っても状態が改善しないことが多く、安楽死が選択肢となることもあります。

診断方法


慢性腎臓病の診断には、以下の方法が用いられます。

・身体検査:全身状態、血圧、食欲や飲水量を確認します。
・血液検査:BUN (尿素窒素)、クレアチニン、SDMAが上昇します。SDMAは早期発見に有用です。
・尿検査:尿比重の低下、タンパク尿、尿蛋白クレアチニン比 (UPC)などを評価します。
・X線検査:腎臓のサイズの測定 (慢性腎臓病では腎臓が萎縮)、腎臓腫瘍、尿路結石症などを調べます。
・エコー検査:腎臓や膀胱内部の状態を確認します。

慢性腎臓病の厄介な点は、血液検査の結果に異常が現れるのは腎機能が約25%以下になってからです。言い換えれば、血液検査のみで慢性腎臓病の進行をモニタリングしていては、異常を認めた時には既に75%以上の腎機能を失っているということです。
そのため、慢性腎臓病の検査は血液検査だけでは不十分であり、尿検査やレントゲン検査、エコー検査を定期的に行う必要があります

治療方法


慢性腎臓病によって失った腎機能を回復させることはできません。そのため、病気の進行を遅らせ、いかに症状を管理するかが目的となります。

食事療法
低タンパク質、低リンの特別な腎臓病食を与えることで、腎臓の負担を軽減します。

薬物療法
高血圧の管理や、腎機能をサポートする薬を処方することがあります。

点滴治療
脱水症状がある場合、点滴で体液バランスを整えます。

サプリメント
腎機能をサポートするためのサプリメントを使用することがあります。
また、対症療法として、降圧剤、制吐剤、食欲増進薬を使用し、QOL (生活の質)を維持することを意識して治療を行います。

予防法とご家庭での注意点


慢性腎臓病を完全に予防することは難しいですが、常に新鮮な水を飲めるようにし、栄養バランスの良い食事を提供しましょう

また、普段から血液検査、尿検査、画像検査を含んだ健康診断を受けることで、早期発見・早期治療が可能となります。

まとめ


特にシニアの猫にとって慢性腎臓病は避けては通れない病気です。しかし、定期的な健康診断を受けて早期発見・早期治療を行えば、健康的な余生を送ることが可能です。慢性腎臓病と診断された場合も、獣医師の指示に従って治療を継続し、腎機能を少しでも保つことを心がけましょう。

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