前十字靭帯断裂とは、犬や猫の後ろ足の膝部分に異常が出て正常に歩けなくなる疾患です。大型犬に多いことが知られていますが、小型犬でも発症します。

本記事では、犬や猫の前十字靭帯断裂について解説し、治療に必要な手術についてもお伝えします。


前十字靭帯断裂は、膝の関節に存在する前十字靭帯が切れてしまう病気です。

靭帯の断裂の主な原因は、加齢による靭帯の脆弱化です。また、肥満や膝蓋骨脱臼などにより膝に負担がかかる状況が続く場合や、ジャンプや落下などの激しい膝への負荷などでも発生します。

猫ではまれですが、犬においては非常に一般的な跛行の原因疾患です。


痛みや炎症によって歩き方に異常がみられます。軽度のうちや、体重の軽い犬猫の場合、なんとなく歩き方がおかしいという程度で、数日で自然に治ったように見える場合がほとんどです。

しかし、慢性化すると半月板という膝の軟骨も痛み、後ろ足を上げたままの状態になったり、後ろ足を引きずったりするなどの症状があらわれます。


診断は、歩き方や座り方のチェック、レントゲン検査や関節液などの検査を行います。また、脛骨前方引き出し試験や脛骨圧迫試験という膝の安定性を確認する整形外科的検査も行います。


治療はほとんどのケースで手術が推奨されます。
術式には、主に断裂してしまった靭帯を人工靭帯やファイバーなどで代用する「関節外固定法」と、靭帯がなくても関節が安定するように脛の骨の角度を調整する「機能的安定化術」があります。

体重や断裂具合、症状などによってどの手法を行うか決定しますが、現在では機械的安定化術のひとつである「TPLO」(脛骨高平部水平化術)や「TTA」(脛骨粗面前進化術)が主流です。どちらの手法も、脛の骨の一部を切って専用のプレートなどを装着することで、膝の関節を安定化させる方法です。


まずは肥満の防止が必須です。
加えて関節への負担を和らげるため、フローリングに滑りにくいマットを敷くことや、高いところからのジャンプなどを避ける環境も重要でしょう。

前十字靭帯断裂は、はじめは症状がわかりづらい場合もあります。放置すると重症化するため、日頃から歩き方をしっかりと観察して、早期発見につなげましょう。


犬や猫が健康に歩き続けるためには、膝への負担の少ない環境や、早めの受診が大切です。また歩き方に異常がないか、普段から気を配って観察し様子がおかしいと感じたら早めに動物病院を受診することをお勧めします。

整形疾患については以下のページでも解説しています
◼️犬と猫の橈尺骨骨折について
◼️犬の膝蓋骨脱臼について


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