腸閉塞とは、腸の一部が詰まり、食べ物や消化物、ガスなどが通過できなくなる状態を指します。これは犬や猫にとって非常に危険な状態で、腸内にガスや液体が溜まると腸が破裂したり、体内で感染が起こり、命に関わる状態に発展することがあります。腸閉塞は早期発見と治療が極めて重要です。

今回は、腸閉塞の原因、症状、診断方法、治療法などを詳しくお伝えします。

原因


腸閉塞はさまざまな原因で発生します。主な原因は以下の通りです。

異物の誤飲
おもちゃの破片、骨、糸、ゴムバンド、布やプラスチックなど、さまざまな物が腸閉塞を引き起こします。特に猫は糸や紐など細長い物を誤飲しやすく、犬は食べ物やおもちゃを噛みちぎった際に異物を飲み込むことがあります
誤飲についてはこちらの記事をご覧ください

腫瘍
腸内やその周囲に腫瘍ができることで、腸管が狭くなり、通過障害を引き起こします。腫瘍が大きくなると、腸閉塞が生じます

腸捻転
腸がねじれてしまう状態で、急激に症状が進行するため、非常に緊急を要する状態です。
腸がねじれた場合、早期に治療を行わないと血流が遮断され、腸が壊死するリスクが高まります

・その他の原因
寄生虫感染や炎症性腸疾患(IBD)も腸閉塞の原因となることがあります。

症状


腸閉塞の症状は、原因や進行の具合によって異なりますが、以下の症状が代表的です。

〈初期症状〉

食欲不振
嘔吐
下痢
腹痛
腹部に触られることを嫌がる

〈進行した場合の症状〉

頻繁な嘔吐や下痢
腹部の膨張
激しい腹痛
無気力、活動の低下
腸の破裂による腹膜炎(命に関わる状態)

〈犬と猫での症状の違い〉

は異物誤飲による腸閉塞が比較的多く、急に嘔吐や激しい腹痛を示すことがあります。一方、の場合は腸閉塞の症状が遅れて現れることが多く、特に糸や紐状の異物による閉塞が多く見られます。猫では突然元気がなくなったり、落ち着きを失うなどの行動変化も見られます。

診断方法


腸閉塞が疑われる場合、迅速な診断が必要です。主な診断方法は以下の通りです。

1.身体検査
腹部を触診し、腸に異常がないか、痛みの有無を確認します。また、異物摂取の可能性や食欲の変化を飼い主様からヒアリングします。

2.血液検査
炎症の有無や脱水の状態、電解質異常を確認します。腸閉塞が進行すると、脱水や電解質異常が進むことが多いです。

3.X線検査
腸内に異常なガスの溜まりや消化管の拡張が確認でき、異物が映る場合もあります。異物の種類によっては映らないこともありますが、閉塞部位やガスの貯留状況を把握するのに役立ちます。

4.超音波検査
超音波では、腸内の異物や腫瘍、腸重積を詳しく確認できます。特に、X線では確認できない軟部組織や腫瘍の検出に有効です。

5.CT検査などの高度画像診断
正確な閉塞部位や異物の位置、腹膜炎の有無を確認するために使用されます。特に腸捻転や腫瘍の鑑別に有用です。

治療方法


腸閉塞の治療は、症状の重さや原因、閉塞してからの経過時間などによって異なります。

〈保存的治療(輸液療法、薬物療法)〉

軽度の腸閉塞や機能的閉塞の場合、脱水を改善するための輸液療法や、消化管の運動を促すお薬、制吐剤が使用されることがあります。

〈外科的治療(開腹手術)〉

異物、腫瘍、腸捻転、腸重積が原因で腸閉塞が発生している場合は、開腹手術が必要です。手術では、異物の除去、腫瘍の摘出、またはねじれた腸を整復します。また、腸が壊死している場合、その部分を切除しなければなりません。

〈内視鏡的治療〉

胃内にある異物の場合、開腹手術をせずに内視鏡を使用して除去することが可能です。これは体への負担が少なく、回復が早い利点があります。

合併症と予後


腸閉塞は治療が遅れると、腸の破裂や敗血症、腹膜炎など、命に関わる合併症を引き起こすことがあります。早期に治療が行われ、重篤な合併症を回避できれば、予後は良好です。ただし、敗血症や腹膜炎に発展した場合、長期的な管理が必要になることがあります。

ご家庭での注意点


腸閉塞を予防するためには、日常的に愛犬や愛猫の行動に気を配ることが重要です。

環境の整備
異物誤飲を防ぐために、家の中の環境を整えましょう。特に猫は糸や紐などを誤飲しやすいため、それらを手の届かない場所に保管してください。犬も小さなおもちゃや破損したおもちゃには注意が必要です。

緊急時の対応方法
ペットが嘔吐や食欲不振、腹痛を示した場合、早急に動物病院で診察を受けることが重要です。異物誤飲の疑いがある場合もすぐに獣医師に相談してください。

まとめ


腸閉塞は、犬や猫にとって命に関わる非常に危険な疾患です。早期に異常を発見し、適切な治療を行うことが、愛犬・愛猫の健康を守る鍵となります。日常的な健康チェックや定期的な健康診断を行い、愛犬・愛猫が健康で幸せな生活を送れるように心がけましょう。

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