犬と猫の口腔内腫瘍は、口の中に発生する腫瘍のことで、良性と悪性のものがあります。悪性腫瘍の場合、他の部位に転移することがあり、全身の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。一方、良性腫瘍であっても、サイズや位置によっては食事や呼吸に支障をきたすことがあります。そのため、口腔内の異常を早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。

今回は、犬と猫の口腔内腫瘍について、原因や症状、治療方法などを詳しくお伝えします。

口腔内腫瘍の種類


犬と猫の口腔内腫瘍は、大きく分けて良性腫瘍と悪性腫瘍の2種類があります。これらの腫瘍はそれぞれ異なる特徴を持ち、治療方法や予後も異なります。また、犬と猫では発生しやすい腫瘍の種類が異なります。

良性腫瘍

良性腫瘍は、周囲の組織に浸潤せず、転移しにくい腫瘍です。一般的に、良性腫瘍は成長が遅く、手術によって完全に取り除くことが可能です。ただし、腫瘍が大きくなると食事や呼吸に支障をきたすことがあるため、早期の治療が推奨されます。代表的な良性腫瘍には以下のものがあります。

線維腫
歯茎や口腔内の軟組織に発生する腫瘍で、成長は遅いですが、大きくなることがあります。

パピローマ
ウイルスによって引き起こされる小さな疣(いぼ)状の腫瘍で、免疫系が正常に機能している場合、自然に消失することもあります。

エプリス
歯茎に発生する腫瘍で、主に犬に多く見られます。エプリスは比較的良性の腫瘍ですが、大きくなると歯や歯茎に影響を与えることがあります。

悪性腫瘍

悪性腫瘍は、周囲の組織に浸潤し、他の部位に転移する可能性がある腫瘍です。成長が速く、侵攻性が強いため、早期発見と積極的な治療が必要です。代表的な悪性腫瘍には以下のものがあります。

扁平上皮癌
口腔内腫瘍の中で最も一般的な悪性腫瘍で、特に歯茎や舌に発生しやすいです。浸潤性が高く、周囲の骨や組織にも広がることがあります。

黒色腫(メラノーマ)
特に口の中や歯茎に発生することが多く、非常に悪性度が高い腫瘍です。

骨肉腫
顎骨に発生する悪性腫瘍で、骨を破壊しながら成長します。非常に侵攻性が高く、他の部位への転移も見られることがあります。

犬では、エプリス、黒色腫、骨肉腫が発生しやすい傾向があります。一方、猫では扁平上皮癌が特に多くみられます。

口腔内腫瘍の発生には、主に遺伝的要因、環境的要因、栄養状態、慢性的な炎症などが関係していると考えられていますが、確かな原因は分かっていません。

症状


口腔内腫瘍の初期症状は微妙で見逃しやすいですが、以下のような兆候に注意することが大切です。

口臭:悪臭がする場合は、腫瘍や感染が原因である可能性があります。
食欲低下:口の中に痛みや違和感があると、食欲が低下することがあります。
よだれの増加:特に血が混じったよだれが見られる場合は要注意です。
口に触られるのを嫌がる:痛みや不快感が原因で、口の周りを触られるのを嫌がることがあります。

また、口腔内腫瘍が進行すると、より明確な症状が現れます。以下の症状が見られる場合は、すぐに獣医師に相談してください。

顕著な腫れ:口の中や顔に腫れが見られることがあります。
出血:腫瘍が破裂したり、組織が壊れることで出血が起こることがあります。
嚥下困難:腫瘍が食道を圧迫するため、食べ物を飲み込むのが難しくなることがあります。
体重減少:食事が困難になることで、体重が減少することがあります。
顔の変形:腫瘍が骨に侵入すると、顔の形が変わることがあります。

診断方法


まず口の中や顔周りを観察して異常な腫れや出血、変色がないかをチェックします。

次に、画像診断が行われます。X線検査では骨の状態を確認し、腫瘍が骨に浸潤しているかどうかを判断します。さらに、CTスキャンを用いてX線よりも詳細な画像を取得し、腫瘍の大きさや形、周囲の組織への浸潤具合を評価します。

最も確実な診断方法は生検です。腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で詳細に検査します。これにより、腫瘍が良性か悪性か、またその種類を特定することができます。

治療方法


口腔内腫瘍の治療は、腫瘍の種類や進行度、犬や猫の全体的な健康状態によって異なります。以下に、主な治療法を説明します。

手術
良性腫瘍の場合、手術だけで完治することが多いですが、悪性腫瘍の場合は再発や転移のリスクがあるため、追加の治療が必要になることがあります。

放射線治療
腫瘍細胞を破壊し、成長を抑える効果があります。特に、手術が難しい場所にある腫瘍や、手術後の再発予防に効果的です。

化学療法
化学療法は、薬剤を用いて腫瘍細胞を攻撃する治療法です。全身に作用するため、転移した腫瘍にも効果があります。化学療法は単独で用いられることもありますが、手術や放射線治療と併用することで、治療効果を高めることができます。

なお、全身状態が悪い場合には、手術や放射線治療、化学療法が行えないこともあります。まず全身の状態を安定させるための投薬や管理を始めることもあります。

予防法やご家庭での注意点


予防については、残念ながらその発生を完全に防ぐ方法は現在のところ確立されていません。しかし、日頃から愛犬や愛猫の口の中を確認し、今回ご紹介したような症状がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう

また、定期的な健康診断を受けることも重要です。これにより口腔内の問題が早期に発見される可能性があります。

まとめ


愛犬や愛猫の口腔内腫瘍は、早期発見と適切な治療が鍵となります。定期的な口腔内チェックと健康診断を欠かさず行い、異常を感じたらすぐに獣医師の診察を受けることが大切です。

歯科疾患については以下のページでも解説しています
◼️犬の歯周病について

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