犬や猫の胸水は、胸腔に異常に液体がたまる状態を指します。軽度の場合は、症状がほとんど現れず、健康診断で偶然発見されることもあります。しかし、重度の場合は、呼吸困難や食欲不振、元気消失などの深刻な症状が現れます。適切な治療が行われないと、命に関わることもあるため、早期の対応が不可欠です。

今回は、犬と猫の胸水について、原因や症状、治療方法などを詳しくお伝えします。

胸腔とは


胸腔は、胸部にある空間で、肺と胸壁の間に位置します。この空間には少量の液体が存在し、肺が滑らかに動くのを助けています。しかし、何らかの原因で過剰な液体がたまると、肺が圧迫され、正常な呼吸ができなくなります。この状態が胸水です。

胸水の種類


胸腔内にたまる体液にはいくつかの種類があり、乳び胸、血胸、膿胸などと言い換えることもあります。

乳び胸
リンパ液が胸腔内にたまる状態で、リンパ管の損傷や閉塞が原因です。乳びは乳白色の液体で、脂肪やタンパク質を多く含みます。

血胸
血液が胸腔内にたまる状態です。交通事故や高所からの落下などの外傷や、腫瘍が原因で発生することがあります。

膿胸
細菌感染によって膿が胸腔内にたまる状態です。胸膜炎や肺炎、胸腔内の膿瘍、寄生虫の侵入などが原因となります。感染症による胸水は、細菌や白血球が多数含まれており、強い炎症反応を引き起こします。

原因


犬の胸水を引き起こす原因は下記のようにさまざまです。

・心不全
・腎臓病
・肝臓病 
・フィラリア症
・外傷
・炎症
・腫瘍
・低アルブミン
・横隔膜ヘルニア
・肺葉捻転
 など

これらの原因は、単独または複数の要因が重なることで胸水を引き起こします。

症状


胸水の最も顕著な症状は呼吸困難です。胸腔内の液体が肺を圧迫するため、犬や猫は正常な呼吸ができなくなります。呼吸が浅く速くなり、重症の場合は口を開けて呼吸することもあります。

また、体力の低下や脱水症状、咳、口の粘膜や舌が青白くなる(チアノーゼ)などの症状がみられます。

診断方法


胸水が疑われる場合、まず犬の呼吸状態、心音、胸部の聴診を含めた身体検査を行います。その後、胸部X線検査で胸腔内の液体の量や位置を確認します。
さらに、超音波検査や血液検査、CT検査を行います。

最も確実な診断方法は胸腔穿刺で、胸腔内の液体を直接採取し、その色や粘度、成分を分析することで、胸水の原因を特定します。

治療方法


治療の中心は原因となる病気への対処ですが、重度の呼吸困難がある場合は、肋骨の間から胸腔に針を刺したり、胸腔内にドレーンを設置したりし、たまった胸水を抜きます。これにより、肺の圧迫が軽減され、呼吸が楽になります。

胸水の治療は、根本的な原因を特定し、その治療を行うことが重要です。心臓病が原因であれば、心臓の治療を行い、腫瘍が原因であれば、腫瘍の除去や治療を行います。感染症が原因の場合は、抗生物質や抗真菌薬を使用して感染を治療します。肝疾患が原因であれば、肝臓の治療を行い、肝機能を改善させます。

予防法やご家庭での注意点


胸水は突然発症するというより、病気の末期状態として現れることが多いため、定期的な健康診断による病気の早期発見と早期治療が胸水の予防に繋がります。特に、高齢の犬猫や持病がある犬猫は、定期的な診察を欠かさないようにしましょう。

また、感染症が原因で胸水が発生することを防ぐために、適切な予防接種を受けさせ、寄生虫予防を徹底することも重要です。

まとめ


愛犬や愛猫の胸水は、突然発症することは少なく、進行した病気の結果として現れることが多いため、早期発見と早期治療が非常に重要です。愛犬の様子に異変を感じた際には、ぜひ当院にご相談ください。

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