膿皮症は、皮膚(特に毛穴)で細菌が増殖することで、痒みや脱毛、皮膚の赤み、湿疹などさまざまな症状を引き起こす病気です。細菌は高温多湿な環境で増殖しやすく、特に梅雨から夏場のジメジメした時期に多く見られます。

今回は、犬の膿皮症についての原因や症状、診断、治療方法などを詳しくお伝えします。

原因


膿皮症の原因は皮膚への細菌感染です。通常、皮膚は高いバリア機能や常在細菌叢を持っており、細菌が増殖しても問題になることはありません。しかし、以下のような要因で皮膚のバリア機能が低下すると、細菌が増殖しやすくなります。

食物アレルギーやアトピー性皮膚炎によるバリア機能の低下
免疫抑制剤の長期服用による免疫低下
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などの基礎疾患

これにより、ブドウ球菌などの常在細菌が異常増殖し、膿皮症を引き起こします。繰り返す膿皮症の背景には、皮膚のバリア機能を低下させる根本的な問題があることが多いため、血液検査や画像検査を行い全身状態を確認することが重要です。

また、膿皮症は細菌が増殖する皮膚の深さによって以下の三種類に大別されます。

表面性膿皮症
皮膚の表面で細菌が増殖し感染した状態。

表在性膿皮症
表皮や毛包内に細菌が増殖し感染した状態。最も頻繁にみられるタイプです。

深在性膿皮症
皮膚の深い部分(真皮や皮下組織)に細菌感染が広がった状態。広範囲に広がりやすく、早急な治療が必要です。

症状


膿皮症の主な症状は種類によって異なります。

・表面性膿皮症
皮膚の痒みや赤み、湿疹などが主な症状です。犬が皮膚を掻いたり、怪我をすることで発症することが多いです。

・表在性膿皮症
皮膚上に赤や黒っぽいブツブツができ、強い痒みや皮膚の赤み、脱毛などが見られます。進行するとフケやドーナツ状のかさぶたが付着する表皮小環が見られ、これは膿皮症に特徴的な症状です。

・深在性膿皮症
皮膚の深い部分で炎症が起きているため、痒みや痛みを感じ、赤く腫れることがあります。

診断方法


膿皮症は、皮膚状態の観察や病変部から採取した皮膚を特殊な染色法で染めて細菌を検出することで診断します。外部の検査センターに病変部の細菌を提出し、細菌培養検査 (より詳細に細菌を調べる)、感受性試験 (どのタイプの抗菌薬が効果的か評価する)を行うこともあります。

また、再発を繰り返す場合は、血液検査やアレルギー検査、画像検査を行い、基礎疾患がないかを調べます。

治療方法


膿皮症の治療は、症状の重さや種類によって異なります。

軽度の場合(表面性・表在性膿皮症)
薬用シャンプーや抗菌剤のクリームを使用し、犬が患部を舐めないようにエリザベスカラーを装着します。なお、病変が局所に限局している場合は、抗生剤の内服は基本的に行いません。

重度の場合(全身症状・深在性膿皮症)
感受性試験を行って必要最低限の抗生剤で治療を行います。また、基礎疾患がある場合は同時並行で治療します。

予防法やご家庭での注意点


高温多湿な環境は膿皮症の原因となるため、クーラーや除湿機を使って23〜26℃、湿度50%程度の環境を保ちましょう

また、1ヶ月に1回程度、夏場は2週間に1回程度を目安にご自宅でシャンプーを行い、皮膚を清潔に保ちましょう。ただし、人用のシャンプーは洗浄力が強すぎるため、必ず犬専用のシャンプーを使用し、シャンプー後は完全に乾かすことも重要です。

加えて、愛犬の皮膚が赤い、体を痒がっている、赤〜黒っぽいブツブツなどの異常が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。

まとめ


犬の膿皮症はよく見られる病気ですが、適切に治療を行えば1〜2週間程度で改善します。また、繰り返す膿皮症の背景には基礎疾患が隠れていることもあるため、皮膚の状態だけでなく全身状態に気を配ることが大切です。

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