犬の尿管結石は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ「尿管」に、尿成分が固まってできた「結石」が詰まる病気です。尿管結石が発生すると、尿の流れが妨げられ、腎臓に負担がかかり、機能が低下する恐れがあります。尿路のどの部分にも結石は発生し得るため、尿管結石も含め早期発見と対処が重要です。

今回は、犬の尿管結石の原因や症状、診断方法、治療方法、予防法などを詳しくお伝えします。

犬の尿管結石とは?


尿管結石とは、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ尿管の中に石のような硬い物質(結石)が形成され、尿の流れが妨げられる状態を指します。これにより、尿がうまく排出されなくなり、痛みや腎機能の低下を引き起こす可能性があります。

尿管結石の症状


犬の尿管結石は、尿管の両側での閉塞や腎機能低下が進行しないと目立った症状が現れないケースがほとんどです。症状としては、血尿、腎機能低下に伴い元気・食欲の低下がみられるようになります。

特に排尿ができなくなる、急に元気がなくなる、嘔吐が見られる場合は、緊急性が高いことがありますので、すぐに動物病院を受診しましょう。

尿管結石の原因


尿管結石の原因は、いくつかの要因が関与しています。

食事:ミネラル含有量が高い食事は結石ができやすい原因になります。
飲水量の不足:水分摂取が少ないと尿が濃縮され、結石ができやすくなります。
遺伝的要因:ダックスフンド、シーズー、ミニチュアシュナウザー、ダルメシアンなど、結石ができやすい犬種があります。
年齢:特定の年齢に限らず発生する可能性がありますが、一般的には中高齢の犬に多くみられます。

尿管結石の診断方法


問診や身体検査で結石が疑われる場合、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

X線検査
結石の有無や位置、大きさなどを確認します。

超音波検査
結石の有無や位置、大きさなどに加え、腎臓のダメージの程度を確認します。X線検査よりも一部分を詳細に確認することができます。

血液検査
腎臓機能や電解質のバランスを確認し、結石が原因で体内に影響が出ていないかを調べます。

尿検査
尿中の結晶や感染症の有無を調べ、結石の種類や原因を特定するのに役立ちます。

これらの検査によって、結石の位置や影響範囲、腎機能の状態が確認され、最適な治療方針が決定されます。

尿管結石の治療法


尿管が詰まっていない場合は、投薬や食事などにより、結石を溶かしたり流したりする内科療法を試みます。
しかし、尿管が詰まってしまっている場合や、内科療法に反応しない場合は、外科治療が適応となります。外科治療はいくつか種類があり、結石の大きさや位置、犬の健康状態により異なります。

・尿管切開術
尿管を直接切開し、結石を取り出す手術です。腎臓側に結石があり、尿管に線維化が見られない場合に適用されます。

・尿管膀胱新吻合術
詰まっている部分の尿管を結石ごと摘除し、残った尿管を膀胱に直接接繋ぎ合わせる手術です。しっかりとした治療効果が期待できる一方、手術リスクや回復期間が長くなる場合もあります。

・尿管ステント
細い管を尿管に挿入して結石による閉塞を回避する方法です。比較的軽度のケースに適しており、術後の回復が早いことがメリットですが、ステントがずれるリスクもあります。

・皮下尿管バイパス術(SUBシステム)
尿管を避け、腎臓と膀胱を人工のチューブでつなぐ手術で、尿管に線維化が見られる場合や他の手術が適用できない場合に適用されます。

尿管結石の予防法と日常のケア


尿管結石を予防するためには、日常のケアが重要です。

適切な水分摂取を心がけ、特に飲水量が減る冬の間は意識して水分を取らせるようにしましょう。ウェットフードやスープを含んだ食事を取り入れることも効果的です。

また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。特に尿管結石のリスクが高い犬種や年齢が進んだ犬には、半年に一度の健診をおすすめします。

まとめ:尿管結石から愛犬を守るために


尿管結石は腎臓に大きな負担をかけるため、早期発見と治療が重要です。日常的な観察に加え、定期的な健康診断を受けることで、無症状の結石も見逃さずに対処できます。愛犬の飲水量や食事に気を配り、もし異常が見られた際は早めに動物病院で診察を受けましょう。

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