愛犬が突然歩くのを嫌がったり、足を引きずるような動きを見せるととても心配になりますよね。レッグ・カルベ・ペルテス病とは、股関節の大腿骨頭部分が壊死して、歩行が困難になる病気です。特に日本では、小型犬に多く見られ、早期に適切な治療を行わなければ、症状が悪化することがあります。

今回は、レッグ・カルベ・ペルテス病の原因や症状、治療法などについてお伝えします。

レッグ・カルベ・ペルテス病とは


レッグ・カルベ・ペルテス病は、大腿骨頭への血流が不十分になることで骨が壊死し、股関節の機能に影響を与えます。壊死した骨は徐々にその機能を失い、股関節に痛みや炎症が生じ、歩行に支障をきたします。この病気の正確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因や血管の異常が関連していると考えられています。

特にトイ・プードル、ペキニーズ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアンなどの小型犬に多く見られ、生後6ヶ月から1歳までの若い犬に発症しやすい傾向があります。この時期は骨の成長が活発で、股関節が影響を受けやすいと考えられます。

症状


レッグ・カルベ・ペルテス病の症状は、病気の進行具合によって異なります。

〈初期症状〉

初期段階では、犬が軽く跛行(びっこ)する程度で、足を引きずることもあります。普段の散歩中や日常の動作で違和感を示し、歩行が不自然になることもあります。また、患肢を使いたがらず、走ったりジャンプしたりするのを避けることが多くなります。

〈進行した場合の症状〉

病気が進行すると、痛みが強くなり、足を全く使わなくなることがあります。股関節の可動範囲が狭くなり、歩行が困難になるだけでなく、関節の硬直や変形も見られます

また、犬が触られるのを嫌がり、痛みで動くのを拒否することもあります。

〈他の疾患との違い〉

レッグ・カルベ・ペルテス病は、股関節形成不全や骨折などの他の関節疾患と症状が似ていますが、特に若年性かつ特定の小型犬種に多い点が特徴です。また、レントゲン検査で大腿骨頭の壊死が確認されることで他の疾患と区別することが可能です。

診断方法


レッグ・カルベ・ペルテス病は、身体検査と画像診断を通じて診断されます。

・身体検査
歩行の様子や関節の動きを観察し、触診によって痛みや腫れの有無を確認します。また、飼い主様からの情報をもとに、痛みの状況についても詳しく問診を行います。

・レントゲン検査
レッグ・カルベ・ペルテス病の診断には、レントゲン検査が不可欠です。レントゲン画像では大腿骨頭の崩壊や変形が明確に映し出され、他の関節疾患と区別するための重要な手がかりとなります。

・その他の画像診断
場合によっては、MRIやCTスキャンなどの詳細な画像診断が行われることもあります。これらの検査は、股関節周囲の軟部組織や壊死の進行度を正確に把握するために使用されます。

治療方法


レッグ・カルベ・ペルテス病の治療法は、症状の進行度によって異なります。

〈保存療法〉

軽度の場合は、安静にして患部への負担を軽減し、消炎鎮痛剤を用いて痛みを緩和する保存的治療が行われます。また、運動を制限し、股関節にかかる負担を最小限に抑えることが推奨されます。

しかし、保存療法はあくまで症状を一時的に軽減するもので、根治には至りません

〈外科的治療〉

病気が進行している場合や保存療法で改善が見られない場合は、外科的治療が必要です。壊死した大腿骨頭を取り除くことで痛みを軽減し、股関節の機能を改善します。この手術は大腿骨頭切除術と呼ばれます。

また、関節の機能をさらに回復させるために、人工股関節置換術が選択されることもあります。どちらの手術を行うかは、症状の進行や犬の生活環境に応じて決定します。

〈リハビリテーション〉

手術後のリハビリテーションも重要です。術後は痛みを管理しながら、適切な運動療法や物理療法を行い、股関節の機能を回復させます。中でも、水中トレッドミルやマッサージ療法は効果的であり、早期の回復をサポートします。

予防法とご家庭での注意点


レッグ・カルベ・ペルテス病は遺伝的要因が強いため、完全な予防は難しいですが、適切な体重管理や運動制限が症状の軽減に役立つことがあります。肥満は股関節に負担をかけるため、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。

また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見が可能になります。歩き方に異変が見られた場合には、早めに動物病院を受診することが重要です。

予後と生活の質


一般的に、手術後1か月程度で生活に支障がない程度に回復することが多く、通常の歩行が可能になります。しかし、完全に元通りになるかどうかは、症状の重さや治療の開始時期によって異なります。

また、適切なリハビリテーションと定期的なフォローアップにより、長期的な予後を改善することができます。

なお、日常生活では階段の使用を避けたり、過度な運動を控えるなど、生活環境の調整も重要です。

まとめ


レッグ・カルベ・ペルテス病は、若い小型犬に多く見られる股関節の疾患で、早期発見と治療が症状の進行を抑え、正常な歩行を取り戻すための鍵となります。飼い主様としては、普段から愛犬の行動や歩行に注意を払い、異常が見られた場合には速やかに動物病院での診察を受けることが重要です。また、定期的な健康診断を受け、病気の早期発見と治療に努めましょう。何か不安なことがあれば、当院スタッフまでお気軽にご相談ください。

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